フリーランスなど個人事業主として活動する際、屋号と呼ばれる個人事業用の名前があります。会社名に当たるような存在ではあるものの、特に必要ないと感じる人もいますよね。
しかし屋号は持っていると、ビジネスを行う上で色々なメリットがあります。仕事の依頼や外からの信頼に関わるメリットもあるため、できるだけ持っておくのが望ましいです。
今回はフリーランスが持つ屋号について、決め方のポイントやメリットなどにも触れながら見ていきましょう。なお今回の記事は以下のような人におすすめです。
- フリーランスとしての開業を考えている人
- 屋号がないまま活動中のフリーランス
- 自分の事業をさらに向上させたい人
Contents
フリーランスの屋号とは個人事業の名前
フリーランスの中には「屋号」と呼ばれる名前で活動する人も多いです。一方で、そもそも「屋号」とは何かについて気になる人もいますよね。
屋号とは個人事業の名前を意味します。企業で言う社名に当たり、個人事業主がビジネスで対外的に名乗るものです。
ちなみに似たようなものに「雅号」と呼ばれるものもあります。雅号はライターやデザイナーなどが名乗るペンネームのことで、自分で勝手に名乗れるものです。
フリーランスは屋号なしでも問題ないのか
フリーランスで屋号を持つ人が多い事実に触れると、「自分も持つべきなのか」という疑問が出てきますよね。しかし屋号は必ずしも持つ必要はありません。
個人事業主が屋号を持つことは特に法律で義務付けられていないものです。同時に本名などの個人名で活動する自由もあります。
特に自分の本名を外向けにアピールしたい場合は、今まで通り個人名のままでも大丈夫です。もちろんわざわざ考えるのが面倒という人も屋号を持たなくて良いでしょう。
フリーランスが屋号を持つメリット5つ
屋号を持つのも持たないのも、フリーランスの自由となっています。しかし屋号を持つと様々なメリットがある点は是非知っておくのがおすすめです。
発生するメリットには、以下の5つが挙げられます。
自分の仕事をアピールできる
まず自分の仕事をアピールできる点です。基本的に屋号には「デザイン」や「ライティング」など、事業に関係する語を入れます。
事業関係の語が入ったものをアピールすれば、相手にも自分の事業を理解してもらえるでしょう。同時に仕事も依頼してもらえるようになりやすいです。
屋号は作ってアピールするだけでも立派な営業活動になるため、手軽で使いやすいビジネスツールと言えるでしょう。
クライアントなどから信頼されやすくなる
またクライアントからもより信頼されやすくなります。世間的に屋号や企業名を持って活動する人物には、真面目に事業運営しているイメージがあるためです。
クライアントも屋号を持たない人物よりも持っている人物の方が信頼が置けると考えます。信頼度が高い分、より案件の受注や単価の向上に繋げやすいです。
また屋号があれば、地元の商工会議所にも加入できます。商工会議所には地域の企業や個人事業主が多く参加しているため、事業の成長の他にも人脈の拡大も見込めるでしょう。
屋号付き口座を開設できる
屋号付きの事業用口座を開設できる点もメリットです。事業用の口座があれば、お金の管理や事業用カードの発行、クライアントの信頼向上などで恩恵を受けられます。
特にお金の管理に関しては、事業での収支を把握できるため、普段の会計業務や確定申告の準備でも非常に便利です。会計業務などに掛ける時間の短縮にも繋がるでしょう。
会計業務が手軽になって浮いた時間は仕事やスキルアップ、休養など重要な用途に利用できます。屋号の存在は事業全体の質を向上させる上でおすすめです。

自分のモチベーションが上がる
自分のモチベーションを上げる点でもおすすめです。自分の本名で活動するよりも、屋号がある方がフリーランスらしさを実感できるでしょう。
同時に屋号を持つことで、今まで以上に真剣に仕事に力が入りやすくなります。一生懸命考えた名前であるからこそ、なるべく事業がなくならないように頑張れるでしょう。
法人化後も実績として示せる
最後に事業が大きくなり法人化しても実績として外に示せます。屋号は法人化後も商号(社名)として引継げるためです。
もし法人化後に今までの屋号を示した場合、比較的長期にわたって真面目に事業運営してきたことをアピールできます。長期的な事業運営は社会的に信頼できる根拠になるものです。
仮に法人化しない場合でも、長期にわたって屋号で個人事業を継続することも大きな信頼に繋がります。
フリーランスが屋号を持つデメリット2つ
メリットが非常に多い屋号にもデメリットがある点も理解しておくと良いでしょう。主なデメリットに、考える手間がかかる点と個人名を覚えてもらえないことがある点があります。
考える際に手間がかかる
まず考える際に手間がかかる点です。今後使う屋号は、なるべくわかりやすく自分の事業をアピールできるようなものである必要があります。
ただ自分でも納得のいく屋号を考えるには、ある程度時間がかかるでしょう。加えて他の人が使っているものと重ならないかを確認することも大切です。
時間や手間がかかるくらいならば仕事などに割いた方がましに感じられる人もいるでしょう。屋号を考えるには手間がかかることは理解しておくと良いです。
個人名を覚えてもらえない場合がある
一方で個人名を覚えてもらいにくいこともあります。クライアントは屋号と個人名があれば、屋号を信頼して取引しようとするためです。
以上の理由から仮にフリーランスで個人名を広めようとすると、かえって屋号が邪魔に感じられるでしょう。個人名で活動するのであれば屋号がない方が良い場合もあります。
フリーランスの屋号の決め方に関するポイント3つ
実際に自分で屋号を決める際は、いくつかのポイントを理解しておくと便利です。主なポイントに、自分の仕事がわかるものにする点や覚えやすいものにする点などがあります。
自分の仕事がわかるものにする
最初に自分の仕事がわかるようなものにすることが重要です。屋号が事業を表すものである以上、仕事がわかるように示すことで相手も必要な時に仕事を依頼しやすくなります。
加えて実際に名刺交換などで紹介する際は、事業との関連性もしっかり説明するとより信頼度が増すでしょう。極力事業をイメージしやすいものの方が印象に残りやすいです。
覚えやすいものにする
また誰が聞いても覚えてもらいやすいものにすることもポイントになります。屋号は自分の事業や実績などを覚えてもらうツールである以上、覚えにくい名前では意味がありません。
特に長すぎるものや理解しにくい専門用語が入っているものは理解されづらいです。誰にとっても発音や理解がしやすいようにすることで覚えられるようになります。
何度も聞き直しがないものや間違われることのないものが望ましいです。また自分でも書きづらいものも避けるようにします。
事前に法務局などに確認するのが望ましい
さらに余裕があれば、事前に最寄りの法務局で他の商号と重複しないかを確認すると良いでしょう。法務局では地域の法人名が登記として保管されています。
さすがに屋号までは法務局で確認できないものの、確認で重複のリスクを減らせるでしょう。重複するとデメリットもあるため、事前の確認がおすすめです。
フリーランスの屋号を決める際の注意点4つ
フリーランスの屋号は比較的自由に決められる特徴があります。同時に決める際にいくつか注意点があることはしっかり理解するべきです。主な注意点に、以下の4つがあります。
会社をイメージさせるものにしない
最初に会社をイメージさせるものにならないように注意が必要です。会社名は法人のみが名乗ることを認められているため、会社名のような表記は禁止されています。
具体的には「カンパニー」や「○○会社」、「○○興業」など実際にあるような会社名のものは避けるべきです。フリーランスらしさを感じさせるネーミングが良いでしょう。
被らないようにする
また屋号はなるべく他のものと被らないようにするべきです。いわゆるパクリの点でも好ましくないとともに、同じ屋号を名乗る人の不祥事に巻き込まれるリスクもあります。
例えば「山田ライティング」と名乗っている人が報道されるような著作権侵害を行った場合、同じ屋号を名乗っている人も風評被害で信頼が揺らぎかねません。
加えて同じ屋号を名乗ると、ネットの検索エンジンでも上位に表示されづらくなります。結果としてネット集客の面でも効果が出にくいでしょう。
他と被らないようにすることは、事業への悪影響を防ぐことでもあります。
商標登録されている語は避ける
さらに商標登録されている語を屋号に入れることも厳禁です。すでに登録された商標は商標権の保護対象となっており、勝手に名乗ると裁判沙汰にもなります。
大好きなアニメのキャラクターやファッションブランドが商標のわかりやすい例でしょう。いくらキャラクターが好きでも屋号に入れるべきではありません。
使用できない文字・記号もある
他にも申請時に使えない文字や記号があることも知っておくべきです。特に記号については「・」や「’」、「&」などの6種類以外は認められていません。
特に音符や顔文字など屋号にしては奇抜なイメージを与えるものは、クライアントからの信用にも関わるため避けるべきでしょう。
日本語として場面に関係なく無難に使える文字・記号を心掛けることも屋号を決める際に大切です。
職種別フリーランスの屋号例
フリーランスが屋号を決める際のポイントや注意点を見てきたものの、具体例を見て参考にしたい人もいますよね。考える上で役立つように職種別の屋号例を紹介します。
エンジニアの場合
エンジニアの場合は、システムなどの開発に関わる立場を示すようなものがおすすめです。具体的には「システム」や「技研」、「プロジェクト」の語が付いたものが良いでしょう。
また「ラボ」と付いていると、単に開発ができるだけではなく有益なアドバイスもしてもらえるようなイメージもあります。自分の専門性が高い屋号にするのが望ましいでしょう。

デザイナーの場合
次にデザイナーの場合は、最も付けやすいのが「デザイン」や「グラフィック」などの語を入れたものです。苗字や名前と「デザイン」を合わせると手軽に作れるでしょう。
より凝ったものにする場合は、自分が大切にしている価値観や考え方などを由来にしたデザイナーらしいものにするのもおすすめです。
デザインの専門家っぽさを示したい場合は、「デザイン事務所」や「デザイン工房」といった語を付けても良いでしょう。

Webデザイナーの場合
Webデザイナーの場合は、「Webデザイン」や「Web」のような語を付けてWebデザイナーらしさをアピールしても良いでしょう。
もちろんデザインをする点ではデザイナーと同じであるため、「デザイン」や「工房」、「デザイン事務所」のようにデザイナーでおなじみの語を使うのも1つの方法です。

ライターの場合
ライターの場合は、文章を書く人間らしく「ライティング」や「アーティクル」、「デスク」といった語を付けるのがおすすめです。
またライターとしてのペンネームで届け出るのも良いでしょう。ただペンネームを考える際は、「山田一郎」のようなあまりにも一般的なものや有名人の名前は避けるべきです。

カメラマンの場合
最後にカメラマンの場合は、写真撮影を生業にする人らしさが伝わるように「スタジオ」や「フォト」などの語を入れるのがおすすめです。
またあえてアルファベットで表記すると、お洒落な写真を撮れる人というイメージも与えられるでしょう。
一方「カメラ」の語を入れる方法もあるものの、カメラ販売を行っていると誤解される可能性もあります。「カメラ」の語を入れるのであれば、事業の説明もしっかり行うべきです。

フリーランスが屋号の申請・変更する方法
屋号を使う際、特別な申請などが必要なのかが気になる人もいますよね。最後に屋号関係の申請を行う方法について紹介します。
開業届に記載して申請
開業する際に屋号も決めてある場合は、開業届に記載して税務署に届け出ます。専用の欄に決めたものを記入するだけで完了です。
なお開業届を出す時点で屋号が必要ない場合や決めるのに時間がかかる場合は、空乱のまま出すこともできます。
ただ屋号にはメリットが多いため、開業時に書いて出すのがおすすめです。

後から申請・変更の場合は確定申告書で
もし後からあらためて申請や変更を行う場合は、確定申告のタイミングで行うと良いでしょう。確定申告書の上の部分にも記入欄があるためです。
申告書に書く場合も決め直すなどしたものを書くだけで完了します。後は税務署が更新された屋号を国税庁のデータに登録し直すだけです。

まとめ
今回はフリーランスの屋号について、決め方のポイントや注意点も含めて解説しました。屋号には対外的な信頼性が増す点や屋号付き口座を作れる点など多くのメリットがあります。
また決める際は、覚えやすいものや事業がわかるものにするのがコツです。一方で重複するようなものや商標が入っているものは避けるべきでしょう。
さらに屋号は開業届や確定申告書の際に申請できます。開業時に届け出ていなかったり、別のものに変更したかったりしても安心です。
屋号があるとビジネスで様々なメリットがあるため、事業の質を高めてくれるでしょう。持たない選択肢もあるものの、もし機会あれば屋号を持つことを考えても良いでしょう。