常に倒産と隣り合わせのフリーランスは、売り上げが少なくなったとき事業を継続するか、いっそのこと廃業するかは悩んでしまうものです。
本記事では、事業を続けようか悩んでいるときの廃業しないための廃業対策と、実際に廃業すると決めた時の廃業の手続き方法を解説します。
この記事を読むことで、もう少し事業を続けようと思うきっかけになり、また廃業した際はスムーズに手続きすることができるようになりますよ。
フリーランスは廃業率が高い
フリーランスは会社員と比べると自由な働き方で魅力的に見えますが、実力勝負の世界なので実際に長く活躍していくのは難しく廃業率が高い働き方です。
「小中企業白書」のデータから、会社の生存率と個人事業主の生存率を比較してみましょう。
会社の1年目の生存率が79.6%なので、廃業率は20.4%となり、個人事業主の1年目の生存率が62.3%となるので廃業率は37.7%となります。
1年目 | 生存率 |
---|---|
会社 | 79.6% |
個人事業主 | 62.3% |
(参考:「中小企業白書」)
1年目から廃業率に差がつき、さらに続けるほど廃業率が上がっていくので、長く生き残れる個人事業主はほんの一握りと言えるでしょう。
「中小企業白書」によると、日本の廃業率のピークは、1996年以降から増加傾向で、特に2003年では4%を超えていましたが徐々に減少して、2018年度では3.5%まで減っています。
さらに都道府県別に廃業率を見ると、福岡県が5.1%と最も高い数字になっています。福岡県に続いて鹿児島県が4.4%、神奈川県が4.2%と高い廃業率となっています。
また、他の国と開廃業率を比較した場合、廃業率が3.5%で低いと思われますが、日本の開業率は5.0%、廃業率は3.5%となっているので、日本の開廃業率は他国と比べるとかなり低水準だと言えるでしょう。
2017年 | 開業率 | 廃業率 |
---|---|---|
日本 | 5.0% | 3.5% |
アメリカ | 10.3% | 8.6% |
イギリス | 13.6% | 12.5% |
ドイツ | 6.8% | 7.6% |
フランス | 10.0% | 4.9% |
(参考:「中小企業白書」)
フリーランスの廃業対策
常に倒産と隣り合わせのフリーランスが生き残っていくためには、様々な廃業対策が必要です。
フリーランスを長く継続するには、以下のようなことに注意しましょう。
スキルアップをする
フリーランスで活動していく上で、スキルアップは欠かせません。
フリーランスのスキルとは、自分の強みである仕事のスキルや、営業力のスキル、コミュニケーションのスキルなどがあります。
スキルアップすることで、案件の幅を広げることができたり、高収入を狙うことができます。
特にフリーランスは、世の中の波に乗って常に進化し続けていないと、生き残ってはいけません。
案件に加えて事務作業まで全てこなすフリーランスでは、勉強する時間を作るのは簡単ではないと思いますが、長く事業を続けていこうと思っているなら、学習する努力が必要です。
例えば、フリーランスのエンジニアがスキルアップしたい場合の勉強法は、このようなものがあります。
- コミュニティに入る
- 書籍や動画で独学する
- 学習サイトで勉強する
- 案件を受けつつわからないところを独学で学ぶ
そして、フリーランスとしてスキルアップしていく上で、最新技術や最新の情報収集は欠かせません。
ただ単に学習するだけではなく、セミナーに参加したり、交流会に参加して似たような境遇の人と交流し、最新の情報や流行の情報交換しましょう。
更なる人脈の広がりも期待できます。
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信用を重ねて仕事を取る
1つひとつの仕事を丁寧にすることで評価や信頼が上がり、クライアントが今後また仕事を依頼しようと思うようきっかけになります。
まず第一に成果物のクオリティ。そしてクライアントとの信頼を重ねるには、成果物のクオリティはもちろんですがコミュニケーション能力も重要です。
クライアントとの連絡を取る回数が少ないと、納品までの進歩状況がわからずハラハラしてしまいます。
相手を不安にさせないためにも、こまめな連絡を自分から積極的に取っていきましょう。たとえフリーランスでも仕事をしていく上では「ホウ・レン・ソウ」が大切です。
特に、納期に間に合わなさそうな場合や、トラブルが起きたときなど、自分一人で悩んでしまうときは、自己解決しようとせずにクライアントに報告、連絡、相談をしましょう。
また、プロ意識が低く「一回くらい手を抜いても良いだろう」と、手を抜いた仕事をするとクライアントからの信用がゼロになり、もう仕事を依頼されることは難しいでしょう。
セルフブランディングを意識する
セルフブランディングを意識することで自分の価値が上がり、単価アップに繋がり、売り上げが上がります。
自分がブランド化することで、何かの専門家というイメージがつくと、そのイメージが広がり認知度が上がることで、新たなビジネスチャンスが舞い込んで来ることがあります。
例えば、書籍の発行や公演の依頼など、自分の専門分野の知識や経験を生かした依頼などがあるでしょう。
このような依頼がきて、新たなビジネスを体験できれば、さらに知名度が上がっていき良いループが続いていきます。
また、クライアント側から見て、信頼できるようなセルフブランディングをしていると、継続した仕事に繋がりやすいため収入も安定します。
フリーランスエージェントの利用
フリーランスエージェントは営業や契約締結の代行をしてくれるサービスです。
フリーランスで活動する上で大変なことといえば、「仕事以外に時間を取られること」が多いでしょう。
自分で営業をしないと仕事が無い、事務処理をしなければいけない、このような仕事以外のやらなくてはいけないことに、本業の作業する時間を取られがちですね。
そこでフリーランスエージェントを利用することで、フリーランスと企業の間を仲介をしてくれるので、自分で営業する時間が無くなる上に、案件の発注がスムーズになります。
例えば、以下のようなサービスがあります。
- 案件の紹介
- 経歴書の添削
- 事務手続きの代行
- キャリアプランの相談
フリーランスエージェントを利用することで、営業をせず効率的に仕事が受注できるようになるため、自分の仕事に集中することができます。
ちなみに、フリーランスエージェントと似ているものでは、クラウドソーシングがありますが、フリーランスエージェントとクラウドソーシングの違いは、自分で営業をするか。しないかです。


フリーランスで廃業した時の手続き方法
フリーランスが廃業する際には、様々な手続きがあります。
提出期限が決まっているので、速やかに手続きをしましょう。
廃業する際の廃業届は、「税務署」と「都道府県税務署」の2ヶ所の税務署へ提出する必要があります。「税務署」は、国税に関する役所。「都道府県税務署」は、道府県税に関する役所。
片方だけの提出では不十分で、どちらも提出しなければならないので注意しましょう。
税務署へ個人事業の開業・廃業等届出書を提出
廃業する際は、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
以下に該当する事業を営み、所得を得ている個人事業主が対象となります。
- 事業所得
- 山林所得
- 不動産所得
提出期限は、廃業してから1ヶ月以内に税務署へ提出となっていて、期限当日が土日・祝日の場合はその翌日が期限です。
都道府県税事務所へ廃業届けの届出を提出
税務署への廃業届に加えて、都道府県税務署にも「廃業届」を提出します。
使用する様式、提出期限は都道府県によって異なるため、都道府県財務事務所の公式ホームページで事前に確認しておきましょう。
例えば、東京都の場合は「事業廃止10日以内」ですが、大阪府の場合は「遅帯なく」と都道府県によってかなり差があります。
事業を廃止しようと考えているうちから確認しておくと、慌てずに提出できるでしょう。
青色申告をしていた場合は所得税の青色申告の取りやめ届出書を提出
青色申告をしていた場合は、税務署へ「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出します。
提出期限は、青色申告を辞めようと思っている翌年の3月15日までです。また、提出期限が土曜日や日曜日、祝日など、税務署が閉庁日の場合は、その翌日となります。
課税事業者の場合
消費税の支払いをおこなっていた課税事業者は「事業廃止届出書」の提出が必要です。
具体的な提出期限は決まっていませんが、廃業したら速やかに提出すると義務づけられています。事業廃止から一カ月以内に提出すれば問題ないようですが、なるべく早めに提出すると良いでしょう。
「事業廃止届出書」は、非課税事業者であれば提出不要な書類です。
従業員を雇っていた場合は給与支払事務所等の廃止届出書を提出
従業員を雇って給料を支払っていた場合は、税務署へ「給与支払事務所等の廃止届出書」を提出します。
提出期限は、廃業から1ヶ月以内です。この提出を忘れていると、税金を余計に払うことになってしまいますので、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書は忘れずに提出しましょう。
もし届出書について不明な点があって相談したい場合は、所轄税務署の源泉所得税担当です。
予定納税の減額は対象か?
個人事業主が廃業するとき、予定納税額が一定の基準よりも多くなることが予想される場合には、税務署に予定納税額の減税「減額申請書」を申請することができます。
また、「減額申請書」を申請する際は、申告納税額の見積もりをした資料を求められるので事前に準備をしておきましょう。
提出期限は2段階に分かれていて、以下のようになります。
- 第一期分と第二期分を減額申請する場合:その年の7月1日~7月15日
- 第二期分のみ減額申請する場合:その年の11月1日~11月15日
廃業の際の注意点
個人事業主が廃業をする際は、注意点があります。
また、廃業届を提出しないと後に自分の負担が増えてしまうので、速やかに提出しましょう。
廃業届の提出時期
廃業日を12月31日にすることで、所得税が安くなることがあります。
その理由は、個人事業主が納める税金は、1月1日~12月31日を基準としているからです。もし廃業日を決められるのであれば、廃業日を12月31日にすると良いでしょう。
さらに、確定申告と同時に進められるため、面倒な書類を一気に片づけることができます。
廃業したのに廃業届を出さなかった場合
廃業届を出さなくても罰則はありませんが、廃業の手続きをしていないと事業が続いてると判断されてしまうことがあります。
事業が続いてると判断された場合、税務署から確定申告の書類が送られてきたり、確認の電話が来ることがあります。
痛い出費をしないためにも、忘れずにすぐ提出しましょう。
また、青色申告をしている個人事業主が2年続けて確定申告を怠ると青色申告の認証が末梢されます。
事業を復帰するとき、または新たに事業を始めるときに1年間は青色申告ができなくなるため、速やかに廃業届を提出することが望ましいです。
まとめ
最後にこの記事をまとめます。
- フリーランスは実力世界なので、会社に比べて廃業率が高い。
- フリーランスの廃業対策は「スキルアップ・信用を重ねる・ブランディングを意識する・フリーランスエージェントを利用」などがある。
- フリーランスが廃業した際は税務署や都道府県税務署に「廃業届」を速やかに提出する。
- 廃業届は提出するタイミングで所得税が安くなることがある。
- 廃業したのに廃業届を提出していないと、確定申告の書類が届くことがある。
以上で、フリーランスの廃業対策って?実際に廃業した際の手続き方法を終わります。